教AC-2:”修羅”と言われる附属某高校の教育実習 

教職Advent Calendar 2020の2日目の記事です。

adventar.org

 

 はじめまして。国語科の中高教員免許を取得予定のはるの助

8ル-su卦 (@waymaru_kenpoo) | Twitter

です。

 

 「修羅」と言われる附属某場高校にて教育実習をしてきたので、今回それについて書こうと思います。

 

 

 書く内容は以下の二点。

①どうして某高校に行こうと思ったのか(もしくは、行く羽目になったのか)

②実習の内容(高校国語・古文)と学び

 

 僕としてはかなり実りのある実習になったし、国語科に関してはむしろここでの実習をお勧めしたいぐらいなので、

「えっ……生徒とレスバして論破されるんでしょ?」

「メンタルズタボロになるんでしょ?」

と某場高校を敬遠している方々に、その実情をお伝えできればと思います。

 

 また、別の学校で実習を行う方の参考にもなるように、実際にやってみての学びや反省についても触れようと思います。

 

 

 

 まず軽く自己紹介しておきます。

・人文学類宗教学コースの四年生

・教職免許は国語(中高)

・県立中等教育学校出身

・教員免許状の一括申請を忘れていて、個人申請する羽目になった

・教職の単位が足りなさ過ぎて死んでいる

・この記事↓で母校実習に行けなかった人

note.com

 

 宗教学コースではありますが、卒論(現在執筆中。やばい。)の内容がほとんど日本文学なので、授業計画のネタには事欠きませんでした。というかほぼ卒論と同じ内容で授業をやりました。

 もし哲学系で国語を取る方がいたら、日本文学の何かしらの分野にはある程度強く通じておくことをお勧めします。(教育実習だけでなく、教員になってからも日文関係で専門分野がないと苦労すると思います)

 

 正直自分でも教員免許を取れる気がしないのですが、こんな雑魚でも教育実習には行けます。(免許を取れるとは言っていない)

 

 

 

 

①どうして某高校に行こうと思ったのか

 

 一番簡潔に言うと、母校実習に行けなくなったから。母校実習に行くためには、「標準履修年次が二年次以下の教職に関する科目について、二年次終了までに履修済みであること」が前提条件なのですが、この条件に加えて、中高一貫校注1が母校の人は、たとえ志望するのが高校の免許だけだとしても、「道徳教育」をしっかり二年生で取っておく必要があります

 

注1……中等部・高等部と分かれている私立の学校であっても、おそらくこれに該当します。友達は「中学の授業を担当する可能性がないとは言えない」というような言いがかりをつけられ、母校実習できずに教職を去りました。必ず支援室で確認を。

 

 

 僕は「別に中学の免許いらないしいっかー☆」と安易に考えていたので道徳教育を取っていなかったのですが、このこと(母校実習を希望する場合、中高一貫校が母校の人は、たとえ志望するのが高校の免許だけだとしても、「道徳教育」をしっかり二年生で取っておく必要があること。大切なので2回言います)を3年の5月に知り、母校に行って内諾書をもらうところまでいったのに、母校に断りを入れなければならなくなりました。悲しいね。

 そしてなぜか1年の時に介護等体験の意義を取っていたので、ついでに3年で道徳教育を取って、中学の免許も取ることにしました。

 

 

 母校実習の道を断たれた哀れな学生は、選考会で附属校や茨城県内の協力校を選ぶことになるのですが、各校には教科ごとに定員があるため、定員数が少ない学校は争奪戦になります。

 

 そして、この選考会で付属校の最大のメリットである教育実習を行う時期についても選択が可能です。普通の教育実習(母校実習も含む)は5~6月に行われますが、付属校の一部の学校では、第1期(5月)の他に、第2期(9月)にも行われます。

 

 5月まるまる授業を休むのは面倒だと思ったので(今考えるとカスみたいな理由だ……)、僕は第2期の実習を希望することにしました。しかし、そもそも第2期の実習を行える学校は2校だけで、もう一つの坂某学校の定員は2人。

 

 既に坂某学校の2期を希望している国語科の人が2人いたし、争奪戦するのも面倒だし、まあ東京なら神奈川の実家から通えるだろうし、偏差値激高高校生集団を見てみるのもありか、という安易な考えで、某場学校にすることにしました。

(今年は疫病のせいで、1期2期は関係なくなったんですけどね。)

 

 ちなみに第2期を希望すると、国語科責任者であろう先生から、全員の前で直々にどうして2期を希望するのか」と質(詰)問されます。そこで「就活が」とかいうと殺されるので、「教員にはならないけど教育系の業界に行きたくて……」とか、理由付けは考えておくといいです。

 僕は就職する予定もなかったので、普通に「大学の授業を休みたくないから」と答えたのですが、思わぬ返答だったのか「あ、そう……(困惑)」と返されただけでした。なので、この方法もありかもしれません。

 

 つまり、割と自主的に(?)志望したということです。

 そしてここで一番伝えたかったのは、母校実習したかったら標準履修年次を守り、中高一貫校出身者は「道徳教育」を取れということです。(大事なので以下略)

 教職関連の説明会でも、なぜか全く言われないガチの初見殺しなので、これを読んでいる二年生以下の方は気を付けてください。

 

 

 

 

②実習の内容(高2・古文)とその学び

 実習の流れとしては、事前指導→各学校でのオリエンテーション→担当してくださる先生(指導教員)との打ち合わせ→教育実習→事後指導

 

 事前指導と事後指導、オリエンテーションについては特筆することもないのでここでは省きます。未だに事後指導の課題を見ていないのは内緒(雑魚)。

 

 指導教員との打ち合わせは、今年は疫病が蔓延していたということもあり、メールで行いました。「テーマ・教材は何でもいい「専門性のある授業を好む生徒が多い」注2「授業は5回」という指示の下、授業計画・指導案を作って送り、助言を頂いた後にもう一度作り直して提出しました。

 事前の打ち合わせはこれで終了。こんなんでいいのか……?と思ってはいましたが、たぶんよかったのでしょう。

 

注2……進学校特有の自由裁量。おそらく他の学校ではこうはいかない。進学校特有というより、この学校特有かも。

 

 

 そして、教育実習中ですが、やることは基本的に、

 

・授業参観(見学。自分の科目だけでなく、他の教科・実習生の授業も見る)

・指導(授業)準備(先生との打ち合わせも含む)

・授業(週2コマ×4クラス、計20回)

 

この3つだけでした。

 あとたまにHRに参加するのと、放課後に生徒と一緒に掃除をしたり、部活動を見に行ったり(僕は指導してくださる先生が野球部の顧問だったので、野球部を見学(笑)していました)。あと日誌。これだけです。

 

 

 ということで、一つずつ見ていきたいと思います。

 

 

授業参観

 授業参観(見学でもいいと思うが、なぜか教職の先生方は「参観」を強調する。謎)は、教室の後方に突っ立ってメモをしながら授業を見るだけです。僕は時間配分、大体の内容と生徒の反応、板書案を大雑把にメモしながら見学していました。

 ちなみに、この時に生徒の態度を見ていれば分かりますが、どんなに面白い授業であろうとも、寝ている人や内職している人は必ずいます。それを自分の慰めにしましょう。

 

 国語については全員の先生の授業を拝見しましたが、本当にレベルが高かったです。扱っている内容が最高に面白いし、切り口がどの先生もユニークで、冷静に最高でした。母校にも授業が面白い先生は何人かはいたのですが、実習校の国語科はまじでどの先生も凄すぎてやばかったです。「全授業受けたいが……」の気持ち(語彙力)

 本当にまじで神だったので、国語オタクな人はぜひ行ってください。

 

 

 

授業準備

 これに関しては、ガチで事前の準備が物を言うと思います。

 

 僕は題材を卒論のど真ん中の内容にしたので余裕のつもりでしたが、結局土日も地元の図書館に通って資料を検討したり、実習校の司書さんに本を取り寄せてもらったりといろいろする羽目になりました。

 なので、準備はしすぎてしすぎることはないです。まじでやらないと殴り返されて死にます。幸い古文については「古文のことはお前なんかより知ってるけど、なにか?」みたいな人がいなかったので(いたかもしれないけど)、論破されることは一度しかありませんでした(後述)。ですが、話によると数学や理科(英語も?)の実習生はかなりの確率で殴り殺されるそうです。気を付けてね。

 

 授業参観・授業の合間にも、教材研究とプリント・指導案作成はやりますが、事前に何やるかをちゃんと計画しておかないとまじで詰みます。一から作り直している時間はないし、図書館も使えません。

 古文であれば『日本古典文学大系』などの全集系を片っ端からチェックしておき、それに関わる研究書を5~6冊は読んでおくべきです。あと、テキストをデータ化(PDFじゃなくて、文字データ化)しておくことが重要。もし何かあった時にテキストを簡単に差し替えられるので。

 

 まあ、先生方の準備室には全集系はそろっているし、実習生用に準備してくださった教室は快適だったしで、教材研究をするにはうってつけの環境でむしろ楽しかったぐらいです。

 

 授業準備自体は楽しい一方で、授業前日の放課後に先生にお見せしたら「落としどころがない」と言われて一から論点を見直さないといけなかったり、困難はとにかくたくさんあるので、それらは頑張ってしのぐ必要があります。

 そしてこの指摘通り、複数回にわたる授業でも毎回必ず「その授業内での落としどころ」を作るべきだと思いました。たぶん生徒にとっても分かりやすいし、授業をしているこっちも着地点が見えるので楽です。

 

 内容がほとんど変わらない回でも、注の追加だったり、追加資料の添付だったりとすることはたくさんあって、授業がある日(水・木曜日)の前日は、先生からいただいたアドバイスを参考にしながら必死に授業プリントを作っていました。でも、徹夜をするほどではなかったです。

(起きると「え、今日授業じゃん……」になるので、目覚めは最悪です)

 

 

 

 

授業 

 ようやく本題まで来た。

 授業についてですが、今回は題材が「冥界」という全人類の興味をひきつけてやまないものだったこともあり、全体的に生徒ウケは良かったと思います(少なくとも悪くはなかった)。

 授業の流れとしては、「本文を音読しながら現代語訳しつつ、傍線を引いてあるところは生徒に読ませて訳させる→一つずつ問題をみんなで考えていく」という形にしました。結構文章量は多かったのですが、全体的にはまあスムーズにいったと思います。(なお、時間配分は全くスムーズではなかった模様)

 

 でも普通に緊張するし、バイト先の塾より教室が広いし、教壇は思ったより高いし、ガチで緊張するし、時折手が震えます。僕は小学生の塾講経験があったので何とかなりましたが、あんまり経験がない人はつらいかも。いや、経験があってもつらいけど。

(もしかしたら、疫病蔓延がなかったら模擬授業をしていたのかもしれない。たぶん本来は事前指導でもやるんだろーな)

 

 最初は小学生と比べて無反応な高校生に傷ついていましたが、慣れれば内職している人とか机に突っ伏している人が見えても全然気にならなくなりました。慣れって大事。それに、内職してる人でも黒板に書いたことをちゃんと写してくれるので、そこは小学生と逆ですね。小学生は口は動かしてもノートを取らないんだよなぁ。

  

 慣れに加えて、性根が語りたがりのキモ=オタクなので、自分の興味のあることを好き勝手に話せるのがめちゃくちゃ楽しかったというのもあります。オタク語りすると、授業に熱が入って生徒も食いついてくれるしね。

 生徒は思っている以上に教員の態度に敏感で、教員側が熱意をもって話すとそれを察知して聞く気になってくれるようです。もちろんメリハリが大切ですが、それを意識して授業を作るといいかもしれません。

 

 

 そして、先ほど論破されたという話をしましたが、顛末はこんな感じです。

 

とあるクラスの授業で、僕が丁寧に検討せずに根拠の一つを飛ばして、結論まで先走る。

すると「そうとは言い切れないんじゃないか」と生徒の一人が発言したことで、生徒全体がそういうムードになる。

僕自身も「あれ、確かに言えないかも?」と完全に生徒にのまれる。

 

 その後は生徒と一緒に検討するという形をなんとか取りつつ、それに対しての反論を試みたものの、失敗。最終的にはそのクラスの結論として「そうとも言い切れないかもしれないが、そう考えることもできる」みたいな曖昧な感じでまとめて終わった、という感じです。

 

(生徒側もおそらく論破する気満々だったと思うけど、彼らも結論を否定しきれていなかったので、引き分けということにしたい。していいよね?)

 

 冷静に考えると、もう一つ本文中に重大な根拠があったので、それを論じればその結論まで持っていけたのですが、慌てすぎて頭が回っていなかった結果、その見落としに気付かないままでした。

 唯一良かったのは、生徒たちも躍起になって取り組んでくれたおかげで授業がめちゃくちゃ盛り上がったことですね。僕は「あの論文だとどこを根拠にしてたっけ」って考えながら、心の中で死にそうになってたけど。てか死んでた。

 

 この事例から学ぶべきことは、生徒に論破されたとしても、それについて知ったかぶりをしたりせず、その意見を忠実に検討しなければならないこと。それと、もし自分の意見が間違っているということになっても、それを受け入れなければならないということ。ここで見栄を張ってしまうと生徒からの信頼が失われてしまうので注意。

(これは先生方もおっしゃっていました)

 

 この時は「否定も肯定もできない」みたいな結論だったからまだ良かったけど、もし完全に否定されてたら心が折れていただろうなーと思います。しかし、そうなっても耐えて授業をしなければならないのだ。つらいね。

 まあこういう恐ろしい部分もあるのですが、その反省を踏まえた結果、その後の授業はうまく行ったので良かったです。

 

 つまり、何が言いたかったかというと、付属校みたいな「実習生とレスバするの大好き!」な生徒が集まる学校に行くときは、自分の授業で扱う範囲の専門知識は最低限しっかり身に着けて、いつ生徒とバトルすることになってもいいように備えておくべきだということです。たくさん論文を読んでそれを心の支えにしましょう。

備えあれば患いなし!

 

 

終わりに

某場高校で教育実習をやるメリット・デメリット

 

メリット

神のような先生方から指導を受けられる

神による授業を見学できる

自分の好きなテーマで授業ができる

 

デメリット

生徒から論破されることがある

つくばから遠い(僕は実家から通いました)

 

  教育実習先としては敬遠されがちな某場学校ですが、メリットはたくさんあるのでお勧めです! 

 ただし、メンタル的につくばから通うのはやめておいた方が良さそうです。(他の実習生はホテルとかウィークリーマンションを借りていたらしい。僕は実家から1時間半かけて通いましたが、たぶん実家だからできたこと。)

 あと、僕が担当した学年はそこまで実習生に対して風当たりが強くなかったらしいので(OBの言葉)、この実習がトラウマにならなかったのはそれもあるかも。

 

 

 長くなったのでとりあえずここまで。

 

 実習期間は長いようで短いです。忙しすぎるせいなのか、まじで一瞬で終わります。なので、もっと何を学ぶのか、自分の中で明確に決めておけばよかったとは反省しています。十分学びを得られましたが、決めておけばより良い学びになったと思います。

 これから教育実習に行かれる方は、せめて先生に訊きたいことをまとめておいたりしておいた方がいいです。

 

 まあ辛いこともありますが、僕は最終日に何人かの生徒に「面白かった!」と言ってもらえたので、それだけで15日分の苦労がきれいに消えました。めちゃくちゃ嬉しかった。本当に言ってくれてありがとう。(たぶん自分の、こういう単純なところは教員に向いてると思う)

  

 そして指導してくださった先生方、本当にありがとうございました。

 

 なんだか無駄に長いだけの文になってしまいましたが、少しでもこれから教育実習に行く方の参考になれば幸いです。

 もし質問などがあれば、ツイッターで気軽に訊いてください。

 

以上。